法人破産Q&A

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Contents

Q 破産後の住まいはどうなのか。

答え 

①賃貸の場合そのまま住んでいて大丈夫です。(社宅の場合は別。)
②持ち家の場合は後日、裁判所に破産を申し立てて破産管財人という弁護士が売ってしまうか、あるいは競売等債権者に強制的に売られてしまうか、もしくはご自身で破産前に売却するまでは住むことができます。

 

Q 住むことができる期間はどれくらいか。

答え 

基本的に半年ほどは大丈夫です。但し、ご自身の意思で任意で売る場合(任意売却。売ったお金のうち一部は費用や生活費に充てられる)を希望された場合は、その時期によりますので、早まることもあります。

 

Q 破産後の仕事はどうなのか、また会社は興せるか。

答え 破産後ではなく、そもそも法律事務所に委任した時から、我々の破産の業務は手伝ってくださりつつも、仕事は自由に就いてください。但し、「雇われ」の形で当面はいてください。ご依頼いただいてから破産が終わるまでの間に、会社を興したり、あるいは個人の自営業の形跡をとると、そのせっかく興した会社や事業も破産で解体されたり、あるいは第二会社的に疑いをかけられたりするので、よくありません。お勤め形式でしたら、直ちに就いてもらっていいのですが、会社を興したり、自営業をしたりするのは、破産手続きが終わってからにしましょう。

 

Q 破産がせっかく終わったのに、債務が残ってしまう場合があるか。

答え 

個人の税金や社会保険の未納は、これはどうしても制度上消えません。それ以外については、法人の分は税金も社保も消えます(従業員から天引きした部分を会社で使ってしまった場合でも、社長個人が責任を負うことや従業員個人が二重払いさせられることはありません)。法人の債務が個人に振ってくることも原則ありません。(あまりにも悪質だった場合は別ですがほぼないです)

 

Q 会社が破産する場合、一部の債権が免責されないことはありますか?

答え

個人の破産の場合には、「免責許可」を得て初めて借金等の債務の支払義務が免除されますが、この免責の効力が及ばない債権「非免責債権」も存在します。各種税金や一部の損害賠償請求権などです。

他方、法人が破産する場合には、破産の手続きが完了した時点で法人そのものが消滅してしまいますので、破産手続の完了をもって当然にすべての債務が消滅することになります。
(そもそも責任を負う主体が存在しないので、免責という概念がないのです。破産手続が完了しても人という主体が存在する個人破産との違いです。)

 

Q 会社の破産を考えていますが、会社所有の自動車や機械を売却してもいいですか

答え

会社が通常の状態であれば、会社の資産を売却しその売却資金を運転資金に回すことはよくあることですし、なんら問題はありません。不要な社用車を売却して人件費や広告費に回すこともあるでしょう。
もっとも、会社の破産を検討している段階では事情は異なってきます。

特に、一部の債権者に対しての支払いが滞っていたり、破産手続を弁護士に依頼する直前での資産売却は、のちのち破産手続上問題となる可能性があり、慎重に行わなければなりません。会社の資産を不当に流出させたことになるおそれがあるからです。

社用車を長年利用していた社員に売却したり、特殊機械や大量の在庫を同業他社に売却したりなどがよくあります。行うとしてものちのちトラブルにならないよう、破産を依頼する弁護士に事前に相談することを強くお勧めします。

 

Q 債権者が自宅に押しかけたりしてこないですか?

答え

破産を検討されている方の中には、すでに債権者からの毎日の督促に疲弊している方もいらっしゃるかもしれません。
個人の破産の場合には、債権者は銀行やクレジットカード会社、消費者金融などが数社といった少数かつ希薄な関係であるケースが多いのに対し、会社の破産の場合には、債権者はその数が数十~数百、また長年の取引先が多いなど、多数かつ密接な関係である場合が多いのが特徴です。そのため、会社の破産の場合には、債権者の対応に悩んでいらっしゃる方が多くいらっしゃいます。

まず、弊所に破産のご依頼を正式にいただいた場合、速やかに各債権者に受任通知を送付します。この受任通知には、今後すべての交渉窓口が弊所になること、ご依頼者本人に直接接触することがないようお願いを記載しております。
したがって、受任通知送付後にもかかわらず直接接触してくる債権者に対しては、原則対応していただく必要はありません(例外的にリース物件の引き揚げ等の際に直接業者さんと連絡をとってもらうこともありますが、それも事務所の指示の下おこなっていただきます)。

にもかかわらず、自宅まで押しかけてくるような債権者がいるような場合には、直接応対するのではなく、直ちに弊所までご連絡ください。弊所から再度本人と直接接触しないよう強くお願いをします。万が一、脅迫態度で迫ってくるようなことがあった場合には、警察に通報してください。

ただ、弊所では長年かなりの数の法人破産をご依頼いただいておりますが、自宅まで債権者が押しかけてくるような事案は年に1件あるかないか程度で、それも執拗に押しかける事案はめったになく、債権者対応に不安を感じていたほとんどのご依頼者さまは拍子抜けしたように感じる方が多いです。

 

Q 会社の破産をするにはどのくらいの期間がかかりますか

答え

①ご依頼~申立までの期間

会社の規模や、債権者数、資産状況等によって大きく異なります。
申立に至るまでには、弁護士費用や管財費用、申立に必要な資料の収集等の準備をしていただきますが、問題がなければ一般的には2~3か月、長くても半年~1年くらいが多いように思います。

②申立~手続終了までの期間

東京地裁の場合、申立から約3か月後に債権者集会が開かれます。
債権者集会は、裁判官、管財人、申立人(破産する人)、債権者がそろう場面ですが、債権者集会に実際に債権者が来ることはほとんどないのが実情です。緊張される方もいらっしゃいますが、弁護士が同席するのでご安心ください。模擬動画もサイトにアップしましたのでご参照ください。
一般的には債権者集会は1回でおわり、事実上これをもって破産手続は終了することになります。ただ、会社の財産があってその換価(売却)が終わっていなかったり、管財人がまだ調査が必要と判断するような事情がある場合には、約1か月誤後ごとに、第2回、第3回と続いていくこともあります。

 

Q 会社が破産する場合には、家族も破産する必要がありますか

答え

会社の破産の相談にいらっしゃるほとんどの方から聞かれる質問です。

法人と個人はあくまで別個のものですから、会社(法人)の破産手続を行うからといって、その代表者も当然に破産手続を行わなければならないわけではありません。
ただ、一般的に法人が銀行等から融資を受ける際、代表者個人が連帯保証人になっていることが多いです。その場合には、会社が破産手続を行えば、銀行等は代表者個人に弁済を求めることになります。したがって、その支払いが困難であるならば代表者個人も破産手続をすることも検討しなければならないでしょう。現実的にも、会社と代表者個人の破産を同時に申し立てることが多いです。
裏を返せば、そもそも代表者個人が連帯保証人になっていなかったり、なっていたとしても弁済する十分な資力があるならば、会社が破産しようと代表者個人が破産する必要は必ずしもないのです。

このことは家族についてもあてはまります。
かつては、家族経営のような会社の場合には、法人の連帯保証人に代表者個人だけでなく、その配偶者、兄弟までなっていることも珍しくありませんでした。この場合には残念ながら、代表者個人の場合と同様、会社に代わって弁済ができない場合には自己破産を検討せざるを得ませんでした。
ただ、最近は連帯保証人は代表者個人のみの場合が多いようです。この場合には、そもそも連帯保証人ではないのですから、会社に代わって支払う義務はなく、会社が破産しようが何ら影響はありません。自己破産する必要はありません。

もっとも、法人や代表者個人が破産手続をおこなう際、家族に対して裁判所(管財人)から家族の資産状況等についての問い合わせや資料提出の要請がある場合もあります。法人や代表者個人から家族に対して財産が不当に流出していないか、資金の流れを確認するためにおこなわれることが多いです。

Q 取締役だった家族に請求が行くか。

答え 

原則いきません。よほど悪質な場合のみです。

 

Q 依頼した後、故郷に帰るなど大幅に住む場所を変えていいか。

答え 

会社も個人も両方とも申立てをする裁判所に住所がなくなってしまいますと、その裁判所で申し立てができず、余計なコストがかかったりしますので、どちらかは住所を残すべきです。詳しくはご相談ください。

 

Q 依頼した後は何をすればいいのか。法律事務所から通知を出して債権者からの請求を止めると言っているが、我々がやることは何か。

答え
① 資料の準備・保管
② 閉鎖に向けた雑務
③ 費用の準備
になります。

① 破産に伴って、最低限でも2年分の会計関係の資料や賃貸借や商品の売買の契約書が必要になりますので、それを保管し裁判所に提出する準備が必要です。

② 弁護士依頼後は、督促は通常一切来なくなりますが、リース品の引き上げをしたりとか、借りている事務所や工場を原状に戻し(戻せない場合は別途ご相談ください)大家に返すなどの作業が必要となってきます。それについて動いてもらう必要があります。

③ 破産には当然一定の費用が掛かりますので、ご依頼時に協議した通りの費用の準備が必要となってきます。

 

Q いろいろ準備が必要とのことだが、弁護士事務所や裁判所にどのくらい行くのか。それによって仕事就けるかどうかかかわってくる。

答え 

社長さんが動いてもらう準備としては、②の様々な立ち合いが2回程度、弁護士との打ち合わせが2回程度、裁判所や破産管財人という弁護士のところへ行くのが各1回程度ですので、それほどのウェイトではありません。したがって、準備のために仕事につかないとは考えず、むしろ仕事は就いてゆくべきだと考えます。

 

Q 破産してしまうと財産は持てないのか。

答え 

会社の財産は、破産をすれば全部破産管財人という人のものになりますので、持てません(その中から破産費用を出すということは例外的に許されます。その他、役員報酬を最後の月にとれるかなどは、個別に相談してください)。個人の方も原則破産管財人に行きますが、自由財産と言われるものの範囲では残すことができます。

 

Q 個人の自由財産とは何か。

答え

各地の裁判所の運用にもよりますが、現金として下ろしてあるものならば99万円以内。銀行の預金、車、生命保険の返戻金などは20万円以内のものになります。したがって、高級なものや不動産などは通常取り上げられ、配当などに回されます。

Q 受任通知というものを弁護士が出してくれると聞いたが、それによって家族などに影響はないか。

答え

事件をお受けした時、費用をもらう前にすぐに受任通知というものを出します。法律事務所が、「任務を受けた」という通知です。これにより、90%以上の債権者はすぐに督促は止めますし、最初感情的になり督促を続ける者でも、一週間もすればほぼ間違いなく収まりますので、安心してください。

 

Q ならば賃金が未払いになっている従業員や取引先などとも、いっさい接触をしなくていいのか。

答え

その通りです。リースやローンの引き上げに立ち会ってもらうのは別として(ローン会社やリース会社は、取り立てをする人とは別の人が来ますので安心してください)、取引先には基本的に接触する必要はありません。取引先と言っても、仕入れ先ではなくお客様側に対して、挨拶をしたい場合にするのは構いませんが、義務ではありません。従業員については、未払いがあったとしても法律事務所側が間に入りますし、もし閉めるときに説明が必要ならば説明会などの場に立ち会うことができます。

 

Qその他気をつけることはあるか

答え 

基本的に上でも述べたように、会社の金はすべて破産管財人という裁判所から選ばれた人間に、渡さねばいけません。従いまして、財産が散逸しないことがすごく大事になりますので、売掛金などは必ず現金で受け取るか、あるいは安全な口座に入れて直ちに下ろしてください。現金として保管しておく限りは、債権者がとっていくことは、ほぼありません。そして、その保管している現金については、破産の費用もしくは例外的に最低限許される役員報酬1か月分以外は、個人的に使うことは一切できませんので、厳重に保管しておくことが必要です。これらを破ると、会社の破産が終わらなくなるだけでなく、代表者自身の社長自身の個人の破産の免責というチャラも得られなくなるので、要注意になります。

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大江戸下町法律事務所

今、皆様は、作り上げ、或いは承継した会社をどうするか、悩んでおられるはずです。 会社そのものだけでなく、従業員、仕入先、得意先への想いもよぎるでしょう。会社を破産させるか否か、迷うと思います。 しかし、ここで、解決を先延ばしにして「逃げて」も、余計に迷惑をかけるだけです。会社を起業や承継をしたときに「逃げなかった」ように、再び、会社破産を「逃げずに決断」してください。それが、皆様と同じ、経営者としての、私からの願いです。 |当事務所の弁護士紹介はこちら
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