少数取引先との関係悪化によって破産することになった事例(人材採用代行業)

この記事を読むのに必要な時間は約2分43秒です。

業種 人材採用代行業

規模 人 員 10名超
   資本金 3000万円

負債 債権者 50名程度
   債権額 7000万円

事例内容

本件会社は大手サービス系チェーン店からの委託を受け,ネットで従業員の募集をし,面接の段取りなど採用代行をする会社であった。以前はその他の会社からも同様な業務を受けていたが,当事務所が関与する時点では,この1社のみが取引相手となっていた。一時は売り上げも順調で従業員も10名は越えたものの,とあるトラブルにより,売り上げが10分の1程度に減少。一気に経営が破綻した。

ポイント

①当該大手サービス系チェーンから本件会社の外注先に払うお金を預かっていた部分について,破産に伴う支払いストップにより返せなかったことから,債権者である大手チェーンの態度が強固になってしまったこと,他方で大手チェーンに対しても反対債権があり,それをどう処理するかも問題となった。

②①に伴い,依頼者が大手チェーンの態度に恐怖感のようなものを抱いていたこと。代表者個人については,連帯保証人となっていたため自己破産をした。が,自宅については従前から配偶者名義だったため保持することができた。

感想としては,①派遣業種や人材採用業種は1社など少数の取引先に依存していることが珍しくなく,取引先の倒産などによる経営リスクが経験上多いこと,また1社に依存するとお金だけでなく精神的にも主従関係が生まれてしまい,相手の会社の顔色を窺わないと破産もできないのではないかと信じ込みがちなこと,その誤解を丁寧に解かなければいけないことである。必ず法的解決はできることである。

②代表者個人の資産は,長年家族名義であるものは保全される。即ち,会社に余裕がある時代から代表者個人のお金を生活費・家計にあて,奥さんが仕事をしていれば,その収入で住宅ローンを組んでおくのは一手である。

または,奥さんに税務上合法な範囲で適正な役員報酬を出し,その役員報酬からローンを組んでもらって返済してもらう。このようにすれば家は当初から配偶者名義となる。その場合,仮に百万が一会社の経営が傾き代表者が破産したとしても,家は守ることができる。

もちろん,会社の経営が傾いた後,悪意をもって親族名義で財産を作ったり,あるいは代表者から親族に財産を移すのは論外中の論外で,絶対に許容されないが,経営者たるもの,いつ何時何があるのかわからないのであるから,10年後20年後を見据え,経営がいい時から計画(まったくやましくない,胸のはれる計画)をしておくのは何の問題もないし大事なことである。

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大江戸下町法律事務所

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